抱き締めたい
泣いて震える肩
夜、離れたところで野宿しているクラウドの様子を見に、わたしは自分の野営をあとにする。
夕刻に隠れて訪れたとき、夜になってもわかるように、場所場所に目印を付けておいた。それをもとに、クラウドの居場所に向かう。
彼の寝場所に近づいたとき、うなされる声が聞こえてきた。
「いや…だ、母さんッ……」
――母さん?
もう少し近づいてみると、クラウドは自分の腕を枕にして眠っていた。
が、その背中は震え、泣いているようにも見えた。
「あんた…を、尊敬…していたのに……憧れてたのに……」
――誰のことを言っている?
切なげに、哀しげに呟かれる言葉は身を切る程の悲痛さを感じさせた。
――この夢は、クラウドの闇と関係あるのか?
クラウドはなおもうなされ続けている。
行くな、ザックス……嘘だ、エアリス……そう苦しげに呟き、最後にクラウドは漏らした。
「どうして……セフィロス……」
――セフィロス? カオス勢の、英雄といわれている男のことか?
身の丈より長い刀を軽やかに操り、素早い動きで幾筋もの太刀筋を繰り出す銀髪の剣士。――クラウドの宿敵である、堕ちた英雄。
――何故クラウドは敵である男を、深い哀切を滲ませ呼ぶ?
そういえば、堕ちた英雄は執拗にクラウドを付け狙っていた。クラウドは応戦するが、どこか辛そうだった。
何故、どうして英雄があれほどクラウドに執着するのか、まったく分からない。
――あるいは、英雄と呼ばれている男の闇が、クラウドの闇を惹きつけるのかもしれない。
過去にクラウドと英雄の間に何があったのか、それが鍵だ。クラウドと英雄の因縁を振りほどかないと、クラウドは濃い闇から抜け出せないかもしれない。
足音をさせないようにクラウドの側に寄り、小手を外すと、わたしは未だうなされ続ける彼の頬に触れる。
人肌の温もりに癒されたのか、クラウドの荒れていた呼吸は緩くなり、安らかな眠りに入ってゆく。
静かな寝息を聞かせるクラウドに、わたしはほっと安堵した。
――ふたりの間に何があったか分からない。
が、コスモス勢の先頭を切るものとして、クラウドの因縁を断ち切らなければ……。
わたしは強くこころに決め、自分の宿所に戻った。
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