抱き締めたい

ちらり、うかがう目






 ――気が付くと、いつも見つめられている。
 憂い深い目が、うかがうようにわたしを見る。



 クラウド・ストライフ――。
 わたしと同じくコスモスに召喚された、調和の戦士。
 だが、彼のなかには、秩序の戦士とは思えない濃い闇が巣食っているように、わたしには見える。


 他の戦士たちは戦いに迷いなく、何かを失うことを怖れない。否、失う前に死守しようとする。
 が、クラウドは戦うことに後向きで、常に何かに悩んでいる。あまり人と打ち解けず、他の戦士とも必要以上に接触しようとしない。
 その性質は同じコスモスの戦士・スコール・レオンハートと似通っているようにも見えるが、スコールとは違い、クラウドの闇は底がない。

 ――なぜこの者をコスモスは調和の戦士に選んだのだ?

 わたしは疑問を持ちながらも、ちらちらとこちらをうかがうクラウドを観察し続けていた。



 そんなある日、わたしとクラウドはたまたま仲間からはぐれ、共闘することになってしまった。
 ふたりで力を合わせ、敵や我々を模したイミテーションを倒してゆく。
 たしかに、クラウドは強い。大振りに振るわれる大剣は破壊力を持ち、気持ちがいいくらいに敵を斬り付けていった。
 一通りイミテーションを片付けたとき、ぽつり、とクラウドは呟いた。

「あんたの剣には、迷いがないな」

 一瞬、何を言っている? と思った。迷いがあれば、敵を倒し損じるだろう。

「そういうおまえは、迷い続けているな」

 少し強い口調で出た言葉に、クラウドは目を伏せる。


「あんたは……いいよな。
 光の戦士なだけあって、輝ける道ばかり歩み、闇を知ったことがないんだから」


 ――何?

 わたしは思わず、クラウドを睨み付けた。


 

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