You and I

君まで後…cm






 俺とクラウドが想いを通わすようになって数日。俺たちの仲を一部の仲間たちに知られるようになり、ジタンやバッツなどに俺はからかわれるようになっていた。
 いや、ジタンやバッツだけじゃない。セシルやティーダが俺を茶化すのに加わることもある。
 こういう風に扱われるのに慣れていないので、俺はどういう表情をしていいか分からなかった。






「なぁなぁ、クラウドとくっつけたんだから、前みたいにひとり淋しくひとり遊びすることもなくなったんだろう?」

 コロシアムでの出番前、ジタンとバッツ、それにセシルに囲まれていた俺は、バッツが唐突に言い出したことに、飲みかけのポーションでむせてしまう。
 俺は以前、夢に出てきて俺を誘惑した女装クラウドに反応してしまい、誰にもばれないように性処理していた。
 最前までうなされていたことや物音でそのときの俺に気付いたのはジタンとセシルだけだったはずだ。
 さては、ジタンがばらしたのか――? そう思い、俺はジタンを睨む。
 ジタンは慌てて首を振った。

「違う違う! 俺じゃないって!」

 ぎゃいぎゃい喚くジタンに苦笑いし、セシルは肩を竦める。

「ごめんスコール、実はそれ、僕が言ったんだ」

 繊細な笑顔を浮かべてとんでもないことを言うセシルに、俺は目を疑う。

(セシルは……こんな奴だったのか?)

 柔和な顔をして、するどい毒を隠していそうなやさしい笑みに、俺は固まってしまう。
 あははは、とセシルは朗らかに笑った。

「そんな猛獣を見るような目をしないでよ、何もしないから。
 それに、君たちはうまくいってそうだから、いまそういう悩みは抱えてないんだろ?」

 そう言われ、俺は俯いてしまう。
 今でこそ、クラウドと一緒にいることが多くなった。前よりも話をするようになり、肩を並べて過ごすこともある。
 が、それが恋人としての態度かといえば、お互いそうではない。そういった空気を醸すことはまったくなく、穏やかな時間を共にすることのほうが多い。しかし、恋人としての抱擁やキスは、告白しあったとき軽く触れ合った以外なかった。
 クラウドに隙がなく、手を出すことが不可能だからではない。むしろ、隔てなど感じられない。
 多分、俺がキスし抱き締めても、クラウドは何も言わず受け止めるだろう。そういう覚悟がクラウドから伝わってくる。

(問題は……俺なんだろうな……。)

 夢のなかで女装したクラウドに迫られ欲情したはずなのに、目の前にクラウドがいても、情欲が湧かない。クラウドのアナザーフォームはそれなりに色気があり、目に訴えてくるものは多い。それなのに、そういう気になれない。

(俺は生身のクラウドをまえにして、怖気づいているのか……?)

 だとすれば、相当に情けないが、何となく手を出しにくいという感覚はある。
 深刻な顔をする俺に、ジタンやセシルが訝しむ。

「あの、スコール……もしかして、まだ……?」

 セシルのぎこちない問いに、どういう表情を浮かべればいいのか分からぬまま、俺は顔をあげる。
 うわぁ……とジタンが困惑の声を洩らす。おそらく、今の俺はかなり微妙な表情をしているのだろう。
 が、その場の空気をまったく読もうとしない精神年齢未熟男が、調子外れたことを言い出した。

「なんだよ、まだぐずぐずしてるのか?!
 そんなの、そこに流れる風に任せ、一気に越えちゃえばいいんだよ!」

 そこにある空気など意に介せず、どこまでもマイペースなバッツが、場にあった重い澱みを打ち壊す。……デリカシーがないにも程があるな。
 俺の思いに同感だったのか、バッツの頭に球体のものがぶつけられる。見なくても、それがブリッツボールだと分かる。
 痛みに蹲るバッツの横に、ティーダが並んだ。

「バッツのKY!
 無理矢理クラウドとしても、意味ないだろう!?
 こういうのは、合意のうえでなくちゃいけないっス!」

 ……KYがKYを叱るか。説得力がないな。だが、ティーダの言っていることは関係を続けていく上で重要なことなのは確かだ。
 ジタンは何とも言いようがないようで、頭を掻いている。セシルも苦笑いしていた。
 そうしているうちに、コロシアムでの俺の順番がきた。現在ぶっ通しで戦っているのはセフィロスで、俺はその対戦相手だ。

(セフィロスか……色々と嫌な相手だな。)

 クラウドが昔愛していた男。いまのクラウドは俺を見てくれているが、セフィロスの想いは、未だクラウドのうえにある。――だから、様々なことを意識してしまう。
 思い悩んでも仕方がない。俺はセフィロスの待つステージに上がった。






 今回のバトルステージは、過去のカオス神殿に設定された。
 長い刀の切っ先を俺に突き出すように眼の横の位置で構え、嘲笑ともとれる笑みを浮かべたセフィロスに、俺は苛立ちを感じる。
 セフィロスは一歩も動こうとしなかった。あくまで待ちの戦法でいくようだ。段々と、俺は焦れていく。――俺の忍耐は、脆く崩れた。
 攻撃を仕掛けたのは俺が先だった。セフィロスは軽がるとガンブレードを刀で受け止め、俺に囁きかけてくる。


「生身のクラウドをまえに、怖気づいているのか?
 ……子供だな」


 目の前で吐き出された俺を抉る言葉に、俺は目を瞠る。
 揶揄とも皮肉ともとれるセフィロスの笑みに、俺は歯軋りした。

「わたしが少年だった頃のクラウドを抱くのを、おまえはわたしのなかで見ていたのだろう?
 幼いながらに淫蕩の素質のある子だったな、クラウドは。
 わたしの愛撫に馴染むのが早く、後ろでも感じることができたのだから。
 淫らでなまめかしい姿に、わたしも引き摺られたさ」

 剣を打ち合いながらも息を切らさないセフィロスに、俺の怒りが頂点に高まってくる。
 クラウドを自分のものにしていたことを自慢するように言うセフィロス。自分だけがクラウドのすべてを知っていると誇りたいのか?!
 そして、クラウドに手を出すこともできない俺を、蔑んでいるのか……?!

「うるさいッ、黙れッ――!!」

 俺はセフィロスの得物を振り切りって斬り上げ、ガンブレードで奴を何度も突き刺した。
 ダメージを負い隙ができたセフィロスに構わず、俺はダッシュでステージをあとにし、コスモス陣の控えで女装姿をして出番を待つクラウドの手を強引に掴んだ。

「ス、スコール?!
 試合はどうしたんだ?!」

 状況がよく分からないまま走りださせられたクラウドが俺に問い詰める。

「棄権だ、勝ちはセフィロスにくれてやるッ!」

 足早にコロシアムから走りだした俺たちを、微笑を浮かべセフィロスが見ていた。
 セフィロスのまえには、俺の次に戦う相手が現われる。その姿を確かめ、セフィロスはフッと笑う。

「……お人好しね。血も涙もない堕ちた英雄が、不器用なふたりの後押しをするとは」

 黒い双翼を拡げた時の魔女・アルティミシアに、セフィロスは自嘲の言葉を漏らす。

「あいつを傷つけ、人生を狂わせたのはオレなんだ。
 本当のことがいえない今、あいつが新しい幸せを見つけたというのなら、オレは身を退く他ないだろう」

 セフィロスの言質は、いつもの奴らしくなかった。どこか穏やかで、諦観が滲んでいる。
 アルティミシアは尊大に腕を組む。

「あなたの独り善がりに付き合わされたわたしの身にもなってほしいものです。
 あれこそが……わたしの"魔女の騎士"になるべき者だったのに」
「そうだろうな。おまえのこころの支えになる男は、奴だったのだから」

 無念げなアルティミシア呟きに重ねられたセフィロスの言に、アルティミシアは訝しむ。
 それに構わず、セフィロスは暗紫に渦巻く天を見上げる。

「この世界は、我らの本当の世界とは理が違う。
 だから、思わぬ運命の歯車が巡りだす。
 想いもまた、十重二十重に絡まり、もつれ続ける……。
 それもまた、面白くもあり、悲しくもあるのだろうな」

 セフィロスの独り言は、静謐さを帯び、過去のカオス神殿に響く。
 またひとつ笑みを浮かべると、セフィロスは刀を構え、アルティミシアに向き直った。






 まさかセフィロスに後押しされたとは知らない俺は、アルティミシア城までクラウドを連れてゆき、回廊まで辿り着いてからクラウドを押し倒した。
 一度夢で見た、クラウドの女装姿。それが今、目の前にある。
 が、夢とは違い、クラウドは戸惑いの眼差しを俺に向けていた。

「スコール……一体、どうしたんだ?」

 クラウドの首筋から、セクシーコロンの香が漂ってくる。それがまた、俺を堪らなくさせる。
 俺は断りもなくクラウドのグロスに濡れた唇にキスし、かすかに開いた口に舌を差し込んだ。
 絡めてくる俺の舌を、クラウドは拒もうとしない。むしろ、積極的に舌を摩擦しあい、俺が口内の粘膜をなぶるのを受け入れていた。
 銀の糸のように唾液を繋ぎ離した顔に、クラウドは眉を寄せる。

「セフィロスに、何か言われたのか……?」

 俺の背に腕を回し、クラウドが尋ねる。
 言うのが恥ずかしい。が、それよりも俺がセフィロスに劣っていると言われたのが悔しい……! 俺はぽつぽつと胸にわだかまるものを語る。

「あいつ……あんたに触れることができない俺を、子供だと言った。
 その上、あいつは自分に抱かれるあんたの様子を自慢げに語った……。
 あんたの姿で知らないものはないと言われた気がして、悔しかった」

 俺の独白に、クラウドは目を丸くする。が、ぷっと吹き出し、くすくす笑いだす。
 むっとして、俺はクラウドに突っ掛かる。

「……何が可笑しいんだ?」

 俺はプライドを傷つけられ、煮え湯を飲まされたんだ。それなのに、あんたは笑うのか!?

「……ほんとに、分かりやすい挑発だな。
 それに七年も隔てを置いていたんだから、あいつの知らない俺もあるはずなのに」

 未だ笑いながら、クラウドは俺の背を宥めるように叩く。そのまま、手を俺の臀部まで降ろし、やんわりと、かつ扇状的に撫でた。
 俺の尻を触るクラウドの意図が分からない。が、ボトムのうえから双丘の狭間を指で突くように圧され、俺は驚愕する。

「ク、クラウド?!」

 くにくにと俺の尻の窄まりを愛撫され、俺は当惑してしまう。
 にっと笑い、クラウドは俺の耳に囁いた。

「……抱かれるだけじゃなく、抱くこともできるんだ。そんな姿、あいつは知らないだろうな。
 今のおまえは、俺を抱くことに拘っているから、俺が抱かれる側にまわるけど」

 そう言い、クラウドは俺に軽く口づけてくる。唇を離し、クラウドは悪戯っぽく俺を見る。

「そうだな……折角女装っていう倒錯的なことをしてるんだから、このまま俺を脱がしていくのも面白いかもな」

 クラウドは今一度自分の姿を見る。ゆるく縦巻きロールしたブロンドのかつらのうえに飾っているダイヤのティアラ、バストの下に大きなリボンか結んである濃紫色のシルクのドレス……それがセクシーコロンと相まって、クラウドの妖しさを引き立てていた。
 いや、女装した男を抱くっていうのも、複雑なものがあるが、化粧したクラウドの顔は本当に女みたいで、妙な気分にさせられる。
 まるで、あの夢の続きを始めるような成り行きに、俺の心臓はうるさく鳴り響いていた。
 ウィッグをよけてクラウドの首筋を強く口づけて吸えば、紅紫色の痕ができた。セクシーコロンの香にくらくらしながら、半身を僅かに起こしたクラウドのドレスのファスナーを降ろしていく。
 そのまま背中に触れたが、まだ何か布地がある。さわさわした手触りのそれは、クラウドの背の質感をリアルに伝えるほど薄かった。

「クラウド……ドレスのしたに、何を着てるんだ?」

 首筋から顔をあげて聞く俺に、あぁ、とクラウドは大胆にドレスの胸元を鳩尾までずらした。
 現われ出でたものに、俺はどきりとしてしまう。

「クラウドッ……それ、女物の下着……」

 立ち上がってドレスを脱ぎ去ったクラウドは、それの裾をぴらり、と捲った。

「あぁ、ランジェリーだな。ベビードールとかいうらしい」

 クラウドが身に付けているのは、胸の間に結んだ紐で胸元を開閉できる、シースルーのランジェリーだった。結び目の下から素肌や臍を大胆に見せている。
 その下に履いているのが、男物のビキニパンツだったので、クラウドに完全女装趣味がないことは分かったが、ある意味刺激的で異様だ。

「あ、あんた、何でこんなものまで着てるんだ?
 ……ランジェリーまで着るのは、やりすぎだろう?」

 気持ち後退ぎみな俺に、クラウドはムッとしたのか、弁解しだす。

「違う、このランジェリーはシルクのドレスとセットなんだ。
 決して、俺に女装趣味があるわけじゃない」

 俺は呆れながらクラウドの言い訳を聞く。
 女装趣味がないというわりには、言い訳するクラウドは必死な勢いだが……まぁいいか。
 何より、ベビードールの透けた胸部から乳首が見えている。それだけで、物凄く色っぽい。こういうのも、悪くないかもしれない。
 上半身を起こす俺に足を拡げて跨ると、クラウドは俺の首に腕を廻し、身体を密着してきた。クラウドの背筋を薄い絹地ごしになぞり、大きく開脚した臀部の奥に指を差し入れ、パンツごと何度か突く。
 喉を震わせるクラウドの耳に、さっきの仕返しだと囁き、俺はクラウドの身体を脱ぎ捨てられたシルクのドレスのうえに倒した。
 ベビードールごと摩擦するように胸の突端を揉むと、クラウドは呻きだす。気を良くした俺は、布ごとふくりと飛び出した小さな尖端を歯で甘く噛んだ。

「んっ…んぅっ……」

 クラウドの喘ぎに釣られ、俺の愛撫は大胆になってゆく。胸への愛戯を続けつつ、空いた手をクラウドの下肢に彷徨わせ、下着の中心を撫で擦った。
 かつらなので髪は乱れないが、覗いて見えるクラウドの首筋は、薄らと紅く染まっている。

「スコール……ッ」

 クラウドに肩を揺すられ、俺は顔を上げる。つややかに濡れたクラウドの蒼の眼が物欲しそうに輝く。
 俺がクラウドの蕩けた表情に見惚れているあいだに、俺のベルトのバックルが外され、ジッパーを降ろされる。

「ちょっと、腰上げて」

 クラウドの一言に、驚いていた俺は腰を浮かす。クラウドはブリーフごとボトムを掴むと、膝下あたりまでずり降ろした。
 唖然と成り行き任せになっていた俺の隙を突き、クラウドは俺の身体を抱き込んで身体を反転させる。あっという間に上下逆になり、俺は焦った。

「クラウド、どういうつもりなんだ……!」

 戸惑う俺を尻目に、クラウドは自分のパンツも脱ぎ、身体を逆向きにして俺の顔に自分の股間がかぶさるようにした。クラウドは目の前にある俺自身を口に含み、飴を舐めるように舌を動かす。
 とりあえず、クラウドのしていることを真似てみるか――快楽から息が上がってくるのを堪えながら、俺はクラウド自身に舌を這わせた。
 俺の動きに併せ、クラウドは俺への刺激を続けながら、自分の手を自身の尻まで持ってゆき、自ら双肉を割り開いて蕾のなかに指を一本差し込んだ。
 俺はクラウドを銜えながら、彼のなかに入った指の動きを余さず見ていた。ある箇所が愉悦のスポットなのか、クラウドの痙攣が俺にまで伝わってくる。クラウドは俺の愛撫だけでなく、うしろでも悦楽を感じているようだ。
 俺は秘腔に埋められたクラウドの指を抜くと、自分の指をクラウドのなかに入れた。ぎこちなく動かしていると、突起のようなものに触った。それを指の腹で擦ると、クラウドの身体がびくびくと震える。

「いいッ…指を三本まで増やして、続けて……」

 俺を振り返って微笑みながら、クラウドは意識的に俺の指を締め付けてくる。肉の感触から、身体が繋がったときのイメージが生々しく起こり、俺の興奮はいや益した。
 自分のうしろを俺に任せたからか、クラウドは俺自身を愛することに専心した。手で弄びながら、口でも快楽を炙り出され、俺はくうっ……と呻いた。

「……これくらいでいいか」

 俺自身を緩く撫でながら言うと、クラウドは自ら動いて体内にあった俺の指を抜き去る。移動して俺の股のうえに足を開いてしゃがみ込み、俺自身に手を添えて狙いを定め、クラウドはゆっくりと腰を降ろしていった。

「あッあッあぁッ……!」

 俺の先端が、クラウドの花を拡げ埋まっていく。大きく肩で息をしながら、クラウドは時間を掛けて俺をすべてなかに収めた。

(すごく、狭い……。それに、襞が、俺に絡んで細やかに蠢いている……。)

 何も動いていないのに、それだけで心地よさを感じる。
 うえから俺を見下ろし、クラウドはふふっと笑った。

「スコール……これだけで、気持ちいいのか……?
 すごく、色っぽい顔してるぞ……」

 クラウドの問い掛けに、俺も笑い返す。……色っぽいのは、あんただろう。額や項に汗を浮かべ、女物の下着を身に付けたまま全身を紅く火照らせてるんだから。すごく、淫らに見える……。

「……だが、まだまだこれからだぞ」

 そう言って、クラウドは尻を弾ませた。彼のなかにあった俺は少し引き抜かれ、直ぐ様なかに戻される。俺自身でクラウドを突くように、クラウドは身体を動かした。
 俺もクラウドと同じように、クラウドのなかに俺を突き刺すように腰を動かしたらいいのかもしれない。そう思い、俺は腰を突き上げた。

「アアッ……!」

 うッ……! 締め付けが、強くなった。多分、今のでクラウドを感じさせた。
 そうだ、先程クラウドに強い快楽を与えた場所、あそこを狙って俺を挿せば、もっといいかもしれない。俺は掻き回すように腰を捻り、そこを俺の先で叩いた。

「アアアッ!」

 ぶるぶるとクラウドが身体を引き攣らせる。俺は上肢を起こし、クラウドの半身を抱き締めながら突き続けた。ベビードールに覆われていない首筋や鎖骨に口づけて跡を残すと、更にクラウドは俺を引き絞ってきた。
 体重を掛けクラウドを押し倒すと、俺は限界に差し掛かった身体を解放に向かわせる。
 クラウド自身を翻弄しながら、俺はクラウドに深いキスをした。溢れかえった唾液がクラウドの唇の端から漏れ出る。構わず、俺はクラウドの舌に舌を絡め続けた。
 打ち付ける腰の速さは小刻みになり、クラウド自身への愛撫も加減が出来ない。――お互いの息が、荒くなる。

「クラ…ウド…クラウドッ……!」

 熱情のまま擦れた声でクラウドの名を叫ぶと、クラウドの締め上げが最大限に強くなった。それにあらがい、俺は限界突破するため最奥まで突き上げた。

「アアァァアァァッ――!」

 クラウド自身が爆ぜると同時に、俺自身もクラウドに導かれ暴発させられる。クラウドのなかに種を播きながら、俺はクラウドに覆いかぶさった。
 俺の背に廻されるクラウドの腕の感触に安堵しながら、俺は疲れのあまり目を閉じた。






 目が覚めたときには、クラウドの手により身の回りを綺麗にされていた。クラウドはアナザーフォームに着替えており、俺の横に寝そべって、目蓋を開けた俺を見つめていた。

「初めてなのに、なかなかよかったぞ。
 久しぶりに、気持ち良かった」

 はにかみの入った笑みで、クラウドは俺に囁く。
 抱いているときのクラウドは淫らで積極的だったのに、すごい豹変ぶりだ。俺はクラウドの二面性に少しく驚いていた。
 俺の心中に気付いたのか、クラウドの顔がさらに紅くなる。

「……なんだよ、自分からなかなか動きだせなさそうだから、俺がリードしたのに、淫乱を見るような眼をするなよ」

 あ、あぁ、そうか。俺が自分からクラウドに触れようとしなかったから、クラウドがイニシアチブを取ったのか。……何か、釈然としないものがあるが。
 じとっとクラウドを見る俺に、クラウドが凄んでくる。

「……まだ納得していないな?
 言うこと聞かないなら、襲うぞ」

 ぽつり、とクラウドの口から出た穏やかでない言葉に、俺は慌てて首を振る。
 俺の態度があからさまだったので、クラウドは肩を竦めた。

「バカ、冗談だ。
 望んでいない相手を抱いても、仕方がないだろう?
 俺は抱かれる側で満足してるから、無理強いはしない」

 そう言って俺を抱き締めるクラウドを抱き返し、俺はじわじわと沸き上がってくる充足感を味わっていた。

(これで、本当の恋人になったんだな……。)

 心身共に想いを確かめあい、もっとお互いを知ることが出来た。クラウドが愛しい……愛しくて、堪らない。
 感情の任せるまま、俺はクラウドの唇に唇を重ねる。唇を離し、俺はクラウドを真っすぐ見つめた。

「あんたを好きすぎて、仕方がない……。
 いまは、まだ決心が着かないけれど、いつか……あんたに抱かれても、構わない」

 大きく目を見開き、クラウドは首を振った。

「いいんだよ、無理して抱かれようとしなくていい。
 そんなこと関係なく、俺もおまえが好きなんだ。
 おまえが相手なら、抱こうが抱かれようが、どっちも同じなんだ」
「それは俺も同じだ。あんた相手なら、どんなことでも、快楽や喜びになる。
 だからいいんだ」

 クラウドはしばし惚けたような表情をしていた。が、泣き笑いのような顔をし、俺の肩に顔を埋めた。

「ほんっとに、バカだよおまえ……。
 ……愛してる、おまえだけを愛してる、スコール……」

 俺はクラウドの身体に腕を絡め、耳元に囁いた。



「俺も……愛している、クラウド……」






 このままこのひとと一緒に生きてゆけたら、俺は今まで以上に幸せになれる。
 この世界に来ることで、他人と激しく愛しあい、満たしあうことができた。



 今よりもっと、俺は強くなろう。



 ――愛するひとを護り、共に生きていくために。









end








*あとがき*



 この小説は、携帯サイト10000hit記念として書かれた小説です。
 アンケートでスコクラに投票してくださった皆様、完結が遅れてすいませんでした!(土下座。汗)



 個人的に、スコールとクラウドはどちらも無口かつ内向的な性格で、なかなか進展させにくかったです(汗)。
 執筆途中に改めてFF8をプレイし、スコールの性格を深く掘り下げたりして、なんとか話を先に進めることができました。
 が、やはりそれでもふたりの距離を埋められなかったので、=リノアであるアルティミシアを絡めたうえ、「ジャンクション・マシーン・エルオーネ」という反則的機械を登場させ、やっとふたりを結ばせることができました。


 ……まぁ、最後のえろシーンは、調子に乗り過ぎた感がありますが(汗)。




 この話は、セフィロスを狂言回しにしたスコールとアルティミシア(リノア)の小説「infinite loop」と、DDFFクラ受け話「無限回廊」を前提にした小説です。
 最終話のセフィロスとアルティミシアの会話は、上記の話を読んでいただけたら、もっと分かりやすくなると思います。




 そして、最後のあたりで、スコールとクラウドのリバになるかも……? な会話がありますが、実のところそこまで深く考えてません(爆)。
 ご希望があれば書きます、とだけ言っておきます(多分、いないでしょうけど。爆)。





 ではでは、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。





紫 蘭


 

-Powered by HTML DWARF-