Happy Ever After

本気なんです。






「……おまえ、本気なのか?」

 俺の目線に合わすように座り、クラウドが聞いてくる。
 涙目だろうが、気にしている場合じゃない。――今が正念場だ。

「本気に決まってるだろ……」

 やばい、声が震えている。かなりみっともない。

 ――こんなのだと、クラウドに愛想を尽かされても、仕方がないな……。

 そう思っていると、急に俺の手を引いてクラウドが立たせた。

「行くぞ」

 クラウドに引っ張られ、俺は歩きだす。

「い、行くって、どこへ?」
「誰の目も気にせず済むところ。
 ここだと、いつ仲間が起きてもおかしくないだろ」

 そう言われ、俺は固まって眠る仲間たちを見る。
 今は皆ぐっすり眠っているが、確かにいつ起きだしてもおかしくない。

 ……ん?

「クラウド、あの……」

 言い掛けた俺に、クラウドは振り返る。
 ――その顔は、見事に真っ赤だった。

「……行くぞ」
「あ、あぁっ!」

 思わず力んで返事した俺を、一瞬きっ、と睨んだが、そのままクラウドは俺の手を繋いだまま前を向いて歩きだした。

 ――これは、クラウドなりのOKサインなんだな。

 そう思うと、物凄く嬉しかった。






 ふたりきりで辿り着いたのは、月の渓谷だった。

「あの、クラウド、ここで……?」

 この場所で、逢引きするのか? この、岩がごつごつした場所で。
 クラウドはちらり、と俺を見、群青の天に映える美しいクリスタルタワーや、瞬く星々を眺める。

「ここの主は、こころが広いからな。少しばかり場所を借りても大丈夫だろう。
 おまえや俺の縁の場所は、厄介極まりない奴がいるはずだしな」

 ――あぁ、ゴルベーザのことか、セシルの兄貴の。

 確かに、パンデモニウムで事に及ぼうものなら、皇帝がトラップを仕掛けて邪魔してくるだろうし、星の体内ではのばらを奪った銀髪ロン毛野郎が奇襲攻撃してきそうだ。
 頷く俺に向き直り、クラウドは真っすぐ俺を見つめてきた。


「――童貞、捨てさせてやるよ」


 クラウドの妖艶な笑みに、どきん、と胸が高鳴った。



 

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