Happy Ever After

頼むからさ






「フ、フリオニール……?」

 珍しくびくついたクラウドの問い掛けに、俺の良心がじくじく痛む。
 が、ここで引いたら、俺とクラウドの関係は、絶対進展無しで終わってしまう。

 ――男だろう、フリオニール! ここですくんじゃダメだっ!

 俺は自分自身に叱咤激励し、クラウドの頬に手を添え、軽く唇を重ねた。
 初めて自分からした、口づけ。かすかにクラウドの唇が震えている。
 そのまま、俺は体重を掛けてクラウドを押し倒した。俺の身体の下で藻掻くクラウド。――ここで怯んじゃだめだ!
 顔を離し、ひどく狼狽えたクラウドの眼を、俺はじっと見た。

「ど、どうしたんだ、こんな、急に」

 いつもと違い、困惑するクラウドは妙に可愛かった。

「急じゃない。ずっと、こうしたかったんだ」

 俺の告白に、クラウドの目が見開かれる。

「そ、そんな、おまえ一言も!」
「そりゃ言えなかったさ。おまえ、前と変わらない態度を取り続けていたからな」

 いつにない強気さで迫る俺に気負されているのか、クラウドは言葉もないようだ。
 普段クラウドのほうが上手なので、俺にてこずっているクラウドを見ると、なんだか気持ちいい。

 ――たまには、こういう態度もいいよな。

 気分をよくした俺は、再度クラウドにキスをした。今度は口内に舌を潜り込ませ、柔らかな粘膜をまさぐる。
 舌を絡めディープなキスをする俺は、さぞ隙だらけだったに違いない。
 ――そろりと手を上げると、クラウドは俺の頬を思い切りひっぱたいた。

「〜〜〜〜〜〜ッ!」

 強烈な平手打ちにぶっ飛ばされ、俺は頬を押さえ突っ伏する。
 クラウドは半身を起こし、傲然と俺を睨み付けていた。

「……何も考えずに盛るな。
 こっちはこころの準備が出来ていないんだ」

 このままじゃ、いつものペースに戻ってしまう。
 俺も身体を起こし、クラウドの二の腕を掴んだ。

「おまえは知らないかもしれないけど、俺はずっと考えてた!
 考えて考えて出た答えが、これなんだ!」

 俺の力説に、クラウドの表情に呆れが含まれてゆく。

「……で、出た答えが、夜這いすることなのか?」

 クラウドの問いに、俺は詰まる。――短絡的だと、言われているような気がした。
 でも、これしか道がないと思う。

「……頼むからさ……」

 何だか、無性に情けない。涙が出てきそうだ。



 俯く俺の頭上から、クラウドの嘆息が聞こえてきた。



 

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