Happy Ever After

俺なんかでいいのかな。






 ――唇に伝わるクラウドの感触は、濡れて甘かった。

 というより、俺、今、クラウドとキスしてるのか――…?

 俺が静かに戸惑っていると、クラウドは顔を離し、ぶっきらぼうな風情で目を逸らした。

「あ、あの、クラウド……。
 今のキスって、どういう……」

 まごまごと言う俺に、明後日の方向を見たまま、クラウドは口にする。

「……おまえが思ったとおりで、いいんじゃないか?」

 ……へ? 俺が思ったとおり?

「クラウド、意味が分からない……」

 俺が思ったとおりと言われても、動転して頭が追い付かないよ。
 ――だから、クラウドの真意がまったく分からないんだ。
 クラウドは身体をうずうずさせ、俺に向き直った。――顔が、少し不機嫌だ。

「ばか、何も思っていないのに、いきなりキスなんてするかよ!」

 そう言い、クラウドは拗ねたように顔を背ける。その頬は、はっきりと紅潮していた。

 ――クラウドのこの反応って……。
 ……えっ?!

 いや、自信が無いんだけど、何も思ってなくてキスなんてするか、ってことは……。

「あ、あの……クラウド」
「何だよ」

 クラウドのぞんざいな口調には、明らかな照れがある。――やっぱり、そうなのか?
 ご、ごくり……と、俺は唾を飲む。

「クラウドは……俺なんかで、いいのか?」

 親指を擦りあわせ、自信無く言う俺に、クラウドは怒ったように腕を組んだ。

「いいも何も、嫌だったらキスなんてしないだろう?」

 そ、そりゃまあ、そうだ。
 それより、もっと肝心なことを……。

「ク、クラウド、俺のこと……好き? だから、キスしたのか?」

 ごにょごにょと呟いた俺に、クラウドの顔がぼっ、と火を噴くように赤くなった。

「バカッ!! どこまでデリカシー無しの唐変木なんだよッ!!」

 そう言い捨て、クラウドは俺に背を向け、早足に歩きだした。
 ぼんやりクラウドを見送りながら、はた、と気付く。

 ――バカッ、俺の唐変木ッ!
 あれはクラウドなりの愛の告白なんだよ!


 慌てて俺はクラウドに追い付き、華奢な身体を背中から抱き締めた。


 

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