Happy Ever After

ね…触っていい?






 どういう奇跡か、頑張る俺へのコスモスのねぎらいか、俺とクラウドは両思いになれた……と思う。
 思う、というのは、イマイチ実感がないからだ。
 恋人同士になったからといって、クラウドの態度は今までと変わらない。他の仲間と同じように接している。
 ふたりきりになる機会があっても、クラウドはべたべたと甘えてこないし、淡泊すぎる。
 俺としては、こう、恋人同士みたいに、いちゃいちゃするのもいい、と思うんだけれど……いや、俺にねっとりと甘えるクラウドというのも、何か違和感がある、か。
 とにかく、俺は複雑な想いを抱いている。
 もっと恋人同士みたいに振る舞えないか、もう少し甘い雰囲気にならないか、……もっと、恋人としてのスキンシップができないか、真剣に悩んでいる。
 俺は悶々としているが、クラウドはどこ吹く風、だ。

 ――あの、クラウド、俺たち付き合ってるんだよな?

 クラウドの余りの変わらなさに、あらぬ疑問を抱いてしまう。――もしかして、俺、クラウドに弄ばれているのかな……と。
 悩みの深さが表に出てしまったのか、ある日の休憩時間にセシルとふたりきりになり、ずばりと聞かれてしまった。

「フリオニール……もしかして、欲求不満?」

 俺は喉を潤すため飲んでいたポーションを、思わず噴き出してしまう。

「なっ、なっ、な……ッ!」

 手を滑らせ落としかけたポーションを慌てて掴み、俺はどぎまぎとセシルを見る。
 にこっ、と邪気のない笑顔を見せ、セシルは首を傾げた。

「図星っぽいね。クラウドとうまくいってないの?」

 綺麗な表情でどぎついことを言ってのけるセシルに、俺は泣きそうになった。

「うまくいくも何も……クラウドが何を考えてるか、分からない……」

 両思いになったのに、どうしてクラウドを疑わなきゃならないんだよ。辛いよ、本当に。
 がっくりと肩を落とす俺に、セシルは苦笑いする。

「クラウドは、本心を明かしたがらない質だよね。
 気持ちを言葉にするのも苦手そうだし。
 そういうときは、当たって砕けるのも、いいんじゃない? たぶん、玉砕はないだろうし」
「当たって砕ける……?」

 頷いて俺の耳元に囁いたセシルの言葉に、俺は仰け反った。
 ――でも、ありかもしれない。






 その晩、皆が寝静まったとき、俺は寝息を発てているクラウドの肩を揺さ振り起こした。

「……何だ?」

 ぼんやりと寝呆け眼のクラウドを抱き締め、俺は耳元に呟いた。


「俺、クラウドに触れたい」


 ――ぴくり、とクラウドの身体が揺れた。


 

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