Lealtime to Paradise

純情・常乙女




 まぁまぁコスモス、そんなに陰気臭い顔をしていると、一気に老け込みますわよ。老いは女の大敵なんですの。あなたの張りのあるお肌も、すぐに皺くちゃになりましてよ?


 え? 旦那のしたことが許せない、と?
 なんで自分と息子を争わせようとしたのか、分からないですって?


 そんなの、オトコという生きものがバカでヘッポコだからに決まってますわ!
 あなたがなさぬ仲の息子と睦ましくしているから、ヤキモチを焼いているんですのよ。
 ホンットに、オトコっていうモノはバカでウスノロばかりですわね。


 あら、夫のことを悪く言うなと? あなたも旦那と同じくらいバカですわ。
 あんな夫とはいえ、愛しているから、そんなに悪く言ってほしくないと。
 ……ほんとうに、どうしようもない方ね、あなた。


 まぁ、あなたの女心も、分からないわけではないですわ。わたくしも、女として色々ありましたからね。
 ……なんです、その胡散臭そうな目は。わたくしを酸いも甘いも知らない鋼鉄の女のように見るのは、およしあそばせ。
 でないと、ブチ切れますわよ?


 まぁま、女神とあろう者が、このわたくしに怯えるとは情けない。でも、特別に許して差し上げてよ。


 ……わたくしの恋の話を聞きたいと? 物好きですわね、聞いてどうするのです?
 それに、わたくしの恋は、簡単に語れるほど安くはございませんことよ。


 そんなにがっかりした顔をして、女神ともあろう者が、そんなに他人の恋路に興味を示すのですか。
 ……ま、いいでしょ。
 よござんす、耳をかっぽじって、よーっくお聞きなさいな。










 思えば、わたくしが結婚し損ねたのは、あの方と出会ったからなのねぇ。
 同じ学校の同級生で、わたくしの毒舌を笑って受け流す、穏やかで大らかな男でしたわ。
 わたくしが惚れるほどの男ですもの、頭脳明晰・眉目秀麗な方でしたのよ。


 学校を卒業してからも、いいお友達でいましょうとあの方と約束しましたけど、本音をいえば、わたくしの魅力であの方をイチコロにしてやりたいと願ってましたわ。
 でも、欲しいものをすべて手に入れてきたこのわたくしでも、恋ばかりはどうにもなりませんでしたわね。


 あろうことか、わたくしがずっと見つめ続けていたというのに、あの方は他の女しか目に入らなくなってしまいましたのよ!
 わたくしとしては、悔しいやら腹立たしいやらで、何かをブッ潰したくもなりましたけど、あの方が恋した女人は、どの者も手を出せぬ、禁断の高嶺の花でしたのよ。
 手に入らぬものを恋することほどバカらしいことはないから、いつかあの方の目も覚めるかと思いましたの。けれど、いつまで経ってもあの方が諦める様子はなく、更に熱を増していく始末。
 どうしようもない阿呆に惚れた自分が情けなくなりましたわ。
 でも、それが恋することの愚かさだと思うと、何ともいたたまれませんわね。


 それでも、わたくしの男を見る目が確かなのは、疑うべくもありませんでしたわ。
 わたくしが愛した方は、愛する祖国と愛する女のために命を捨てるような、漢気ある者でしたのよ。
 ただ、その方の情熱が自分に向けられなかったのが、いまでも残念でなりませんけれど。


 わたくしは愛する女のために覚悟と勇気、真心と献身を捧げた方を、もっともっと好きになってしまいましたのよ。
 そのせいで結婚する機会を失ってしまったのですから、自業自得かもしれませんけれどもね。






 まぁコスモス、あなたが泣くことはございませんでしょ。
 ほんとに、仕方がない方ですわねぇ……。








end







*あとがき*



 ここまでお読みいただき、ありがとうございました。



 これは、コスモスの悩みを聞いたあと、自身の恋の昔語りをするシャントットのお話です。


 この話に出てくるコスモスの夫は「ルフェインのシド(大いなる意思)」、息子はカオスです。コスモス・カオスレポートをもとに設定しています。


 そして、シャントットが片思いしていた相手は、FF11ウィンダス・ミッションのキーマンである殉国の隠者・カラハバルハです。
 こんな話を書きながらも、わたしはFF11未プレイです(汗)。
 シャントットのキャラクターを掘り下げるため、FF11関連のサイトを読んでシャントットが片思いしていたらしい人物を知り、そのキャラをネットで追い掛けてみたら、生きざまがすんごい男前でかっこよく、びっくりしました。


 気位が高く破天荒、超絶お天気屋の気紛れ屋なシャントットが、実はひとりの男性を想い続ける一途で純情な女性なら、可愛いなぁと思い、この話を書きました。
 シャントットの最終武器を造るための素材「たぎる血」の文言に

「泣かない女はいない」

 とあったのも、上記のようなシャントットをイメージできていいなぁ、と思うし。


 でも、本当のシャントットは隠してきた想いを簡単にひとに打ち明けないだろうなぁ(;^_^A。




紫 蘭


 

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