Angel Eyes

意地悪すぎる






〜[ν]-εγλ0001 8月11日〜




 今日は、俺の15歳の誕生日。昨年の誕生日は、セフィロスと同棲してから二ヵ月で、俺とセフィロスは俺の誕生日を切っ掛けに、……その……プラトニックな関係から一歩進んだ。
 セフィロスとの仲もいくところまでいってる今年は、ただ誕生日を祝って終わるんだと思う。
 ……まぁ、俺とセフィロスの仲も色々あるから、一筋縄でいかない可能性もあるけど。






 一般兵である俺の日常は、一年経っても大して変わらない。今年は午前に訓練、午後に伍番街プレートの巡回警備をしていた。
 一方のセフィロスは、1stクラスソルジャーの特権をフル活用――というか悪用というか、任務の命令拒否をして、一日をオフにしている。

「ただいまぁ〜〜」

 カードキーをドアに挿し家に入ると、香草や食用オイルの匂いが玄関に漂ってきた。
 キッチンを覗くと、長い銀の髪を軽く束ねたセフィロスが、魚を包丁で器用に捌いている。切り分けた魚の薄切りの身を下拵え用の器に並べ、塩胡椒とオイルを振り掛けている。
 俺の気配に気付いたのか、ハーブをちぎっていたセフィロスが振り返り、にこりと笑った。

「夕飯が出来上がるまで、まだ間がある。
 先に風呂に入ってこい」

 そしてまた調理に戻るセフィロスに頷き、俺はランニングと下着、短パンをクローゼットから出してバスルームに向かった。
 タオルにボディーソープを擦り付けながら、俺は昨年の誕生日の自分を思い出した。

 ――去年はセフィロスを誘惑するんだって意気込んで、念入りに身体を洗っていたんだよなぁ……。

 ソルジャー・ジェネシスが差し向けたソルジャーたちに犯されかけ、トラウマを抱えていた俺に遠慮し、欲望を自慰だけで晴らして俺に指一本触れなかったセフィロス。
 彼が自らを慰める姿を秘かに見ていた俺は自分が情けなくなり、このままではいけないと悟った。きっとセフィロスから何かを仕掛けてくることはないだろうから、勇気を出して自分から彼を誘わなければいけないと決心した。
 そうして、一年前の誕生日にそれを実行し、セフィロスとの仲が進展した。――完全に結ばれたのは、それよりもっと後だったが。

 ――一年の間で、色々あったよなぁ……。

 俺とセフィロスが一緒に住み始めた日にソルジャー・ジェネシスが失踪し、年末のウータイ戦争の最中にサー・アンジールが姿を消した。……それが切っ掛けでセフィロスが人間不信に陥り、俺がレイプされたっていうのもあるけど。
 自分のしたことに反省したセフィロスが、あの後俺を腰砕けにするほど抱いたんだよなぁ。
 いや、そのことは、後から立て続けに起こったことに比べたら、大したことじゃない。

 ――まぁ、今のところ丸く納まってるっぽいから、いいか。
 去年に比べたら、どきどきのない誕生日だけど、それもいいよな。

 呑気に思いながら、俺は湯に浸かって身体を休めていた。――セフィロスが何を企んでいるかも知らずに。






 俺が風呂から出たときには、既にダイニングテーブルに手の込んだ料理が数々並んでいた。野菜をゼリーで固めたものにベーコンとチーズのタルト、魚の刺身のオイル掛け、緑色の冷たいスープ、白身魚を卵の衣で焼いたもの、茹でたでかいエビに黄色いソースを掛けたもの、ビーフステーキのマスタードソース掛け、籠に盛ったパンが綺麗に置かれている。
 俺が席に着くと、セフィロスが目の前にあるグラスと自分のグラスにシャンパンを注いだ。

「誕生日おめでとう、クラウド」

 軽く互いのグラスを合わせると、涼やかな音がした。
 特に腕を奮ってくれたのか、今夜の晩餐はとても美味しい。訓練や任務で腹を空かせていたのもあるが、俺は次から次へと料理を平らげていった。
 セフィロスがパティシェに特別に注文して作らせたフルーツデコレーションケーキを食べているとき、コーヒーを飲んでいたセフィロスが、懐からおもむろにパッケージングされている細長い箱を取り出す。

「誕生日プレゼントだ、受け取ってくれ」

 差し出された箱をお礼を言ってから受け取り、包装を解き箱を開けると、緑色の小さな石が埋め込まれた銀のプレートに、組紐のような文様の銀のチャームを施したペンダントが入っていた。

「……ペンダント?」

 首を傾げて聞くと、セフィロスは頷き口を開いた。

「プレートに書かれた刻印を読んでみろ」

 言われたとおり、組紐文様の透かし彫りが施してあるプレートの文字を読んでみる。表面には俺の名と誕生日が刻まれていた。

「……何コレ、迷子札?
 それとも軍用のドッグタグ? ドッグタグなら、もう持ってるけど」

 神羅軍に入ったときから、ドッグタグ――認識票を支給されている。セフィロスは直属じゃないけど上官だから、俺に新しい認識票をくれたのか? 変な話だ。誕生日のプレゼントとしては、あまり嬉しい代物ではない。
 迷子札としても、何かが欠けている。住所が刻まれていなければ、用途を果たしていないじゃないか。第一、もう迷子札など持つ年齢じゃないし。
 上目遣いで聞く俺に、セフィロスは一瞬固まり、ややあって深い嘆息を吐いた。

「何で誕生日にドッグタグや迷子札なんぞをやらねばならん。
 ドッグタグなど、一揃で充分だ。この日にやるような代物ではないだろう。
 プレートの他に、チャームもついている。
 それに、プレートの裏面を見てくれ」

 言われたとおり裏面を見て、俺は目を見開いた。


 ――I Love You Eternally  from S
 ――俺は、おまえを、永遠に愛している――


 目を上げセフィロスを見ると、彼はこれ以上ないくらい美しく笑う。……何だろう、ものすごく、胸が、熱い。

「……すっごい、キザな迷子札……」

 照れ隠しに言いながらも、俺はセフィロスと目を合わせられない。
 俺の手から箱を取り上げるとペンダントを箱から外し、セフィロスは俺の後ろに回る。

「チャームだが、『永遠の結び目』という古代種の遺跡で見つかる文様だ。
 何かの現象が途切れないよう呪を込めるとき、物にこの文様を刻むらしい」

 ペンダントを俺の首に着けながら、セフィロスがチャームの形について説明してくれる。この文様は、プレートにも刻まれていた。

「もしかして、このペンダント、特注だったりする……?」

 プレートと文様のトップを指で弄びながら、俺は小さな声で尋ねる。
 ペンダントの留め金を掛けると、セフィロスは俺の首筋に軽く口づけた。

「あぁ、宝飾店に特別に作らせた。
 何か記念になるものを贈りたいと思い、おまえの誕生石であるペリドットを埋め込んだ銀の板に、オレのメッセージを刻ませた。
 そして、メッセージの意味をさらに強めるため、古代種の文様のチャームを作らせた。
 指輪は目立つから贈れないが、ペンダントなら制服の下にでも毎日着けていられるだろう?」

 自分の席に戻ったセフィロスが、俺の首に掛かったペンダントに、満足そうに目を細める。

「……わかった。いつも身に付けておくよ。
 セフィロス、ありがとう」

 はにかみながら言う俺に、セフィロスは頷いた。






 セフィロスが食後の後片付けをしている間、俺は彼が作ってくれたジン・トニックを飲んでいた。去年はこれからセフィロスに迫るため、素面ではいられないと彼にジン・トニックを作ってもらったが、今年は片付けをし始める前に、彼が自発的に入れてくれたのだ。
 今年は何もするつもりがないから、別に酔う必要はないけど、手持ち無沙汰だし、折角作ってもらったから飲んでいる。――ただ、先程からちらりちらりと意味ありげに俺を見つめてくるセフィロスの目線が気に掛かるが。

「……何?」

 堪り兼ねて聞く俺に、キッチンに立つセフィロスが向き直る。

「今年は、いいのか?」

 セフィロスの問いに、俺は眉を寄せ首を傾げた。

「だから、何が?」

 意味が分からない俺に、セフィロスが腰に手を当て、俺目がけて下肢を突き出した。

「去年、おまえはオレが欲しいとねだったな。
 ……今年は、いいのか?」
「……はぁ?」

 一瞬、セフィロスの言っている意味が、本当に分からなかった。
 えっ、と……意訳すれば……セフィロスの身体が欲しいと、俺におねだりしろと?
 瞬時にして、俺の顔が発火した。

「ああああ、あんた、何考えてんだ!
 そんなの、今更だろ?!」

 むきになって拒否する俺に、セフィロスは少しばかり落胆した表情をする。

「そうなのか? ……オレの肉体も、おまえにやる誕生日プレゼントだと思っていたが……」

 ぶつぶつと言うセフィロスに、俺は反応に困ってしまう。セフィロスの身体も誕生日プレゼントって……毎晩ヤリ倒してる間柄なのに、本当今更だと思うんだけど。

「去年は、あんたがなかなか行動に移せないヘタレだったから、仕方なく俺が誘惑したんだろ。
 いまはあんたがヤリたいようにヤッてるのに、こっちからおねだりなんてするかよ」

 減らず口を叩く俺に深々と溜め息を吐くと、セフィロスは俺から背を向け、シンクのなかで泡だらけになっている食器をスポンジで洗い始める。
 黙々と片付けをし、乾燥機に並べたセフィロスは、俺に何も言わずバスルームに向かった。

 ――あれ、もしかしてまずった?

 心なしか、セフィロスの機嫌が低下したような気がする。今夜は、沢山の心遣いをしてくれたセフィロスだ。素敵な誕生日プレゼントも贈ってくれた。
 彼の真意がよく分かっていなったから仕方がないとはいえ、先程の仕打ちはセフィロスに冷たすぎるだろうか。恥ずかしかったからといって、あんなにむきになって拒否してはいけなかっただろうか。
 後悔と混乱で頭をぐるぐるさせながら、俺はジン・トニックを飲み干した。






 セフィロスの欲しているものが何なのか、分かってる。俺自身から積極的に彼を求めてほしいんだ。
 今まで、セフィロスとセックスすることに消極的だったわけではないし、自分から快楽を追い求めて彼を貪ったこともあった。
 まさか、俺がセフィロスを愛してないなどと、彼も思っていないだろう。今年の春から色々あって、自分たちの愛が簡単に壊れるものではないと、お互い確認しあった。
 風呂から出てくるセフィロスを待たず、俺はベッドに潜り込み、夏用の薄い寝具のなかに包まっている。
 やがて、バスルームのドアの閉まる音がし、セフィロスの足音が寝室に近寄ってきた。

「クラウド……先に寝たのか?」

 ドアが開いたのと同時に、ベッドに歩み寄ってくる気配。俺はぎゅっと目を瞑り、セフィロスの様子を窺う。――先刻のやり取りのことなど感じさせない、平静な態度だ。
 ふぅっ、と息を吐き、ベッドに横たわる俺の隣に座ると、セフィロスは寝具を捲り、動きを止めた。

「ク、ラウド?」

 セフィロスが呆気に取られたのをチャンスに、俺は跳ね起きると、身体をぶつけるようにして彼を押し倒した。

「おまえ……裸で」

 上ずった声で告げるセフィロスに、俺は自分から口づけを仕掛ける。
 セフィロスがバスルームから出てくるのを待つとき、俺はいつも部屋着を身に付けている。が、今夜は服を脱いで待っていた。
 舌を絡め合い唾液を啜るキスをしながら、俺はセフィロスのバスローブの前をはだけさせる。セフィロスも、のしかかる俺の胸を掌でゆっくりと撫でていた。

「あんた、誕生日には自分の身体もプレゼントするって言ったよな?
 だったら、俺のしたいようにさせろよ」

 羞恥心が込み上げてくるのを押さえて、俺はセフィロスの身体を愛撫し、再び軽くキスをする。
 瞠目していたセフィロスだが、やがてニヤリと笑った。


「いいだろう。さぁ、来い、クラウド」






 真夜中、俺はセフィロスを軸にして奔放に踊る。
 淫らな水音が蕾から奏でられる。セフィロスの腰もリズミカルに弾み、俺のナカを掻き回していた。

「セフィっ、あはぁ…ッ、い、い……ッ!
 もっと、もっと…狂わせ、て……ッ!」

 俺が煽るように身体を動かすと、セフィロスが上体を起こし、俺を抱き締めてきた。

「はッ…クラ、ウド……。
 もっと、オレを喰らえ……ッ!」

 今夜のセフィロスは、いつもより興奮しているようだ。毎晩俺の体力をオーバーするくらいの抱き方をするが、今日はいつにも増して激しい。
 俺も、ちょっと乗り過ぎかな。セフィロスが欲しくて、彼の情熱を搾り取ろうと、ナカの押さえが効かない。暴れ気味、かもしれない。
 それは、しょうがないだろう。俺のつたない前戯で、セフィロスがあんなに感じてくれたんだから。乳首を吸っても、項や耳朶にキスしても、喘ぎ声を漏らしてくれたんだから。どこを撫でても、それこそ後花を軽くなぞっても、セフィロスは身悶え、俺を欲しがってくれた。
 彼も俺の愛撫をいつもより念入りに、しつっこくしてくれた。泣きが入っても聞いてくれないから、堪んないよなぁ。焦れに焦れてから、やっと俺のナカに挿入することを許してもらえたんだ。
 俺をベッドに倒したセフィロスの尻が、小刻みに動きだす。俺の身体も調子に乗って惑乱しだした。

 ――もう、体力も限界。気持ちいいけど、早く終わってくれ〜〜!

 俺のこころの叫びは、甘く派手な喘ぎと絶頂にすり替えられた。同時に達し、俺は意識を失った。






 事後、息が整ってからセフィロスに抱えられて風呂場に直行し、後始末を任せて俺は眠っていた。途中、口移しでポーションを飲まされたような気がするが、よく覚えていない。
 セフィロスは基本的に優しい。あとで自分にとってメチャクチャむかつくことが起こると分かっていても、俺の体力を慮り、事が起こるまえに回復してくれるのだ。
 ――だから、ヤツは遠慮しない。

「ほぅ、昨日がおまえの生まれた日だったのか。
 わたしからも祝いの言葉を述べるぞ」

 セフィロスの身体を借りてお出ましになったヤツ――ジェノバの愛撫に睡眠妨害され、俺は不機嫌に睨み付けた。

「いらねーよ。俺の誕生日を祝ってくれるなら、今夜は何もせず寝かせてくれ」

 俺は疲れてんだから……と寝言半分に言う俺の胸の突起を強く捻り、ヤツは無理矢理俺を叩き起こしてくれた。

「痛いッ、痛いって!」
「何を言う。痛みのあるほうが、感度が上がるくせに」

 ククク、と底意地悪そうに笑い、ヤツは俺の反応仕掛けた下肢を容赦なくいたぶった。

 ――くっそ〜〜! 俺をマゾみたいに言いやがって!

 心中、不平不満で一杯だ。が、悔しいがそれに反し、俺の身体は一段と淫らにしなる。
 本当に、痛みを与えられじんじんする乳首が、もっとと刺激をせがんでいる。なんで、こんなになるんだ?
 身体の訴えにヤツはクスクス笑い、俺のびんびんに堅くなった胸の突起を舌で舐める。――快楽が、ダイレクトに股間に直結した。

「アアアッ!」

 びくんびくん、と身体を痙攣させ、俺は果ててしまう。

「最高の快楽を、わたしからの贈り物としよう」

 ヤツは俺のナカにあるしこりを指で何度も責め立て、俺を悦楽地獄に突き落とした。何回イッても尽きない愉悦が、波のように襲い掛かる。

「イ、ヤ…ッ、から、だ…、こわ、れ……ッ!
 ――アアアアアッ!」

 ほんと、壊れる! もうカラッポだよ!
 本気で泣き叫び始めて、やっとヤツは俺のナカに狂暴なモノを突き立てた。
 セフィロスの顔をしながら冷たい眼で俺を見下ろし、妖しい笑顔で激しくナカを抜き差しし続ける。――綺麗で魅惑的だけど、怖い。
 コイツに抱かれるといつもセフィロスは不機嫌になる。でも、俺がセックスの相手をすれば、コイツは他の人間とセックスしないと約束したんだ。
 コイツはセフィロスの身体を使い、誰彼構わず――それこそ、ソルジャー・ジェネシスにも――抱かれ、快楽を貪ってきた。
 セフィロスはそのことで深刻に悩んでいた。自分が他の誰かに抱かれていることを、俺にばれないよう気を遣っていた。
 が、俺はそのことを知っていた。彼の身体にキスマークが残っていたので、そうではないかと思っていた。そして、彼ではない彼に抱かれているのでは? と感じる夜もあった。
 結局、セフィロスとソルジャー・ジェネシスの情事を目撃し、俺から一方的に別れを切り出すようなことがあったりして、セフィロスは自分の身に起きていることを打ち明けてくれた。
 俺もセフィロスの告白に、色々覚悟をした。そうして、コイツと直接対決し、コイツに抱かれ続けると約束した。
 相手構わずなコイツが、どこまで約束を守ってくれるか分からないけど、セフィロスを苦しませないためなら、俺はコイツに抱かれても構わない。
 脳裏で微笑むセフィロスに誘われながら、俺は再び失神した。






「クラウド、おまえの上司に、おまえが欠勤することを連絡しておいたぞ」

 翌日、腰が痛くて起き上がれない俺を案じ、セフィロスが付きっきりで看病してくれた。

「オレの知らないところで、クラウドをイキ狂わせるような真似をするなど、許せん」

 セフィロスが作ってくれたトマトとチーズのパン粥をベッドに入ったまま食べつつ、俺は機嫌が悪い彼をちらりと見る。

「いや、俺をこんなにしたヤツは、あんたの中にいるんだから。
 変なことは考えないでくれよ」

 宥めようとする俺に、セフィロスはムッとしたように眉を顰める。

「本来なら、おまえをイキ狂わせていいのはオレだけだ。
 その特権を、他人に盗られて許せるわけなかろう」

 セフィロスの言い分に、俺もカチンとくる。――心配してるのに、エロのことしか頭にないのかよ!

「そーいうあんたも、俺の誘惑にノリノリで、あんなことやこんなことをしてくれたよな。
 イキ狂わせたというのなら、昨夜のあんたも同じだ」

 俺が腎虚になったら、どーしてくれるんだ?! と凄んだら、セフィロスは軽く肩を竦めた。

「いや……今年はオレの身体を欲しがらないのか? とふざけて聞いたら、恥ずかしがりながらもおまえが乗ってきたからな。
 おまえの誘惑の仕方が、あまりにも刺激的すぎたんだ。いつもよりやる気にならないほうが、男としておかしいだろう」

 妙ににやにやしながら言う英雄サマに、俺の堪忍袋の尾が切れた。

 ――昨日のアレは、みんなわざとだって?!
 俺の悩みは、いったい何だったんだ!

 身体をぷるぷる震わせる俺を、セフィロスが覗き込んでくる。

「……クラウド?」

 恐る恐る尋ねられ、俺はベッドに乗せられた小さな机をダンッ! と叩いた。


「もーあんたとは、絶対にヤラないからな!!」


 何で俺の相手は、意地悪な奴ばかりなんだ!



 怒り狂った俺にセフィロスが何時間も謝り倒したのは、言うまでもない。








end

 

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