love and hatred
触れてはいけない
――俺が起こした数々は、悪夢だったとしかいいようがない。
古代種の神殿でセフィロス――ジェノバに黒マテリアを渡し、混乱した俺は慰めようとしたエアリスを何度も殴った。
「メテオ」に対抗できる、唯一究極の白魔法「ホーリー」を唱えるため、忘らるる都の祭壇で星に祈りを捧げていたエアリスを斬りそうになった。
その挙げ句、セフィロスの魔手からエアリスを護れず、見殺しにしてしまった。
セフィロスの偽りの誘導により人格崩壊させられた俺は、ジェノバから取り返した黒マテリアをセフィロス本人に手渡し、メテオを呼ばせウェポンまで復活させてしまった――。
大空洞から噴き出るライフストリームの奔流に巻き込まれ、俺は二度目の魔晄中毒になりミディールに流された。
ティファの助けにより本来の自分を取り戻した俺は、セフィロスを打倒し、エアリスが呼び寄せたホーリーを解放するため旅を続けた。
――でも、俺、知ってるんだ。
俺がライフストリームの流れに巻き込まれたとき、少しだけセフィロスの手が動き、差し伸ばされようとしていたことを。
あの時の俺はおぼろげにしか意識がなく、その上ジェノバ細胞の影響により自我が壊れていた。
そして、ただ、セフィロスの人形として、主だけを見ていた――。
元に戻った俺は、明るく自然に振る舞っている。
でも、あの時のままのほうがよかったんじゃないかと、後向きになることもあるんだ。
――人形じゃなくても、俺は昔からセフィロスに恋していたから。
今の俺は、自分の想いに素直になれる立場じゃない。セフィロスを敵として憎まなければならない。
だから、俺は自分の想いを隠し続けて、星を救う同士とともにいる。
――あの時、俺の意識があって、あんたの手に触れていたら。
俺は自らあんたの人形になって、あんたの意志のまま動いただろう。――例えそれが、「本当のあんた」の望むことじゃなくても。
でも今の俺は、あんたに触れてはいけない。
――自分の起こした罪の償いとして、俺はあんたを倒す。
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