love and hatred

自分に愛された、あなたを嘆く




 ――クラウド、オレはおまえを哀れに思う。
 オレに愛されてしまったおまえを。

 オレはおまえを手に入れるため、おまえに手を掛けられ一度死にかけた身体を再生しようとしている。
 誰よりも欲し、愛したおまえ。同じ時を過ごし、素肌を重ねるだけで、オレは幸せを感じることが出来た。
 が、ニブルヘイムで出生の秘密――オレがモンスターであるジェノバと人間のキメラと知り、オレは壊れた。
 おまえの故郷を焼き、おまえの愛する母を殺した。――おまえとの愛と絆を、オレは自ら断ち切った。
 結果、オレはおまえと刄を交わしあい、瀕死の傷を負わせあった。オレはおまえの手によりライフストリームに突き落とされ、絶命する一歩手前まで至ってしまった。
 が、オレは諦めない。星や人間に復讐したい。何より、おまえをこの腕のなかに留めておきたい。
 だから今一度甦り、オレは再びおまえをこの手に抱こう。




 宝条の手によりおまえにオレの細胞が移植され、魔晄漬けにされたのを、オレは魔晄――ライフストリームを通して知り、狂喜した。
 オレの細胞が埋められている限り、おまえはオレのいうがまま、人形であり続ける。なんてオレに都合のいい展開なんだ。

 ――が、おまえはオレの思うとおりにはならなかった。

 ザックスの記憶が干渉しているのか、おまえはオレに歯向かい続けた。
 それを知りつつも、オレはおまえに気付かれないようオレの思うように誘導し続けた。

 ――そして北の大空洞で、おまえはオレの手に墜ちた。

 オレの望むがままに黒マテリアを捧げ、うっとりとオレを見ていたおまえ。オレはおまえを捕まえようとした。
 が、その時ライフストリームが暴れだし、おまえを巻き込みオレの手の届かないところに押し出した。
 オレはライフストリームのなかに、古代種の小娘の意志を感じた。

 ――あの小娘、とことん邪魔をしてくれる。

 オレの手からクラウドを護るため、小娘はクラウドをライフストリームのなかに沈めたのだ。
 ライフストリームを通し、小娘が語り掛けてくる。

『そんなことをしても、クラウドは手に入らないよ?』

 一々オレに差し出口するとは、命知らずな小娘だ。オレはエネルギーを発し、小娘を退ける。

『いまのあなたじゃ、クラウドと愛し合うことはできない。
 クラウドの好きなあなたに、戻ってあげて』

 遠ざかりながら、古代種の小娘はそう言い残した。

 ――もとのオレだと?
 モンスターであるオレが、人間に戻れるか。
 オレには、神になるしか道はないのだ。

 人間であれるなら、人間でありたかった。が、オレは厄災と同質のモンスターなのだ。今更人間に戻れない。――どうしようもないのだ。




 後日、クラウドはライフストリームのなかから地上に流れ着き、幼なじみの娘の力を借りて、オレが愛した本当の自分を取り戻した。


 ――おまえがおまえに戻ったのなら、オレも躊躇いなくおまえを抱ける。

 この身は大空洞に置き、魂だけおまえのもとに――。


 オレは唇を笑みの形に釣り上げた。


 

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