a short story

Milky Way




 七月七日。
 ウータイの伝説によると、七夕といわれるその日は、哀しい恋人たちが一夜だけ逢う日といわれている。
 地上に降りた天女と人間の男は恋をし結ばれたが、天上人の定めゆえ、ふたりは引き裂かれ天女は天に帰らなければならなかった。
 天女は父である天神から、追い掛けてきた人間の男と一月に一度逢う約束を取り付けた。
 が、天神の策略により、男には一年に一度だけ逢瀬が叶うと伝えられ、ふたりは七月七日の晴れた夜に逢っているという。





「今夜は、このまま雨が降らなきゃいいな」

 翌日を配達の休業日にしたクラウドは、ウータイで借りている一軒家の縁側に座り、冷酒を片手に寛いでいた。

「何でだ、明日は休みなのだから、別に雨が降っても構わないだろう」

 台所でウータイの名産・切り子の徳利に冷やしたウータイの酒を入れ替え、セフィロスはクラウドの隣に座る。
 ウータイの夏の伝統衣裳「浴衣」を粹に着こなし、肩を過ぎたあたりで銀の髪を緩く纏めているセフィロスは、男らしい艶を醸し出している。同じく浴衣を着ても、自分では借りてきた衣裳を身に纏っているようで、クラウドは少しく悔しい。

「ユフィが教えてくれたんだ。
 七月七日は引き裂かれた恋人たちが逢う日だって」
「……あぁ、七夕のことか。そういえば今日がその日だな」

 本で読んだ知識を記憶のなかから引き出し、セフィロスは頷く。クラウドは緩く微笑んだ。
 今は居ない仲間をクラウドはほろ苦く思い出す。
 星を救う旅をした仲間は、ヴィンセントとナナキを除き、皆ライフストリームに帰ってしまった。
 養い子であったデンゼルが旅立ったのを見送ったのも、遠い昔のことだ。――時間の間隔が分からなくなる程、クラウドとセフィロスは長い時を生きてきた。
 そんな仲間から教えられた、切なく哀しい伝説は、どれほど年月を経てもクラウドのなかで色褪せない。

「忘れるわけないだろう。
 俺にとっては、身に摘まされる話だったんだから」

 徳利の冷酒をガラスのぐい呑みに酌み、クラウドは口に運ぶ。
 セフィロスもぐい呑みを揺らしながら空を見上げた。

「……そうだな、逢えない苦しさを味わったのは、天のふたりだけではない」

 一息に酒を煽ると、クラウドはセフィロスの肩にもたれ、着物の袷を掴み寛げた。
 はだけた鎖骨に唇を付けると、クラウドは強く吸う。痕が残ったのを見て、彼は艶やかに笑った。

「……逢えない時間が苦しい分、一緒に居る時が幸せに感じられるんだ」

 耳たぶを軽く噛み、項に口づける積極的なクラウドを眺め、セフィロスは彼がかなり酔っていると悟る。

「これからも、ずっと……一緒だからな」

 潤んだ瞳で真っすぐ見据えて言うクラウドに微笑すると、セフィロスは空の恋人たちに見せ付けるように濃厚なキスをする。
 クラウドを抱き上げ寝室に運ぶと、セフィロスは彼を敷き布団に寝かせた。
 が、むくりと起き上がると、クラウドは強い力でセフィロスを押し倒した。

「今夜は……俺があんたを気持ち良くする」

 そう言いながらクラウドはたどたどしい手つきでセフィロスの帯を解き、浴衣の前を完全にはだけさせる。
 一瞬眉を寄せると、セフィロスは自身の身体を愛撫するクラウドに身を預けた。





 行灯の小さな明かりだけが灯る暗い部屋のなか。
 紺地の錦の布団に、長い銀の髪が流れるように乱れている。
 セフィロスにのしかかり彼の滑らかな肌を弄んでいたクラウドは、寝床を彩る銀を一束手に取り、絹のような感触を楽しんだ。

「……紺色のうえにあると、あんたの髪って銀河みたいだな」

 髪を捻ったり指に絡めて遊ぶクラウドを見ながら、セフィロスは恋人の背を撫でる。

「さながら、牽牛と織女の間に挟まる天の川のようにか?」
「そんな感じだな」

 クラウドが笑って髪を放すと、銀糸はさらさらと音を発てて紺のうえに落ちる。
 唇を釣り上げると、セフィロスは髪に気を取られ力が抜けているクラウドを引っ繰り返し、自分の下敷きにした。
 視界が反転し落ち掛かってきた銀の滝に、クラウドは目を丸くする。

「あっ、俺が攻めるって言ったのに!」

 身じろぎするクラウドにクックッと笑い、セフィロスはクラウドの胸の突起を舌で転がしながら下肢に指を絡めた。

「はッ…セフィ……!」

 溢れる蜜がセフィロスの指をしとどに濡らす。彼はぬめりの力を借りてクラウドの菊の蕾に指を埋め込んだ。

「あッ、ヒァッ……!」

 汗を散らしながら、うっすらと赤く染まった身体をくねらせ、クラウドは小刻みに震える。
 クラウド自身に口づけセフィロスが窪みに濃密な愛撫を続けると、彼はなまめかしく喘ぎながら、魚のように身体を跳ねさせ達した。
 脱力したクラウドの腰を掴むと、セフィロスは自身をクラウドのなかに突き入れ、身体を繋げる。
 激しく蠢きながら、セフィロスは揺すられ悩ましげな表情を浮かべるクラウドに囁いた。

「どんなことがあっても、おまえを放しはしない。
 忘れるな……クラウド」

 情熱の籠もった声に、生理的な涙を流しながらクラウドは何度も頷いた。



 空の恋人たちが逢瀬を重ねている間、セフィロスはクラウドを散々貪り尽くした。
 精根果てて気絶したクラウドは、翌朝乱れきった状態で目覚めたうえに、二日酔いで唸っていた。
 寝床のうえでぐったり萎れているクラウドをじっくり眺め、セフィロスは意地悪く笑った。






end







*あとがき*


 七月七日はFF7の日じゃー! ということで、七夕とも引っ掛けて書いた小説です。


 ウータイでの七夕の一夜という設定ですが、それとなく日本っぽい雰囲気を出してみました。
 クラウドたちが飲んでいるお酒は、いうまでもなく日本酒です。……清酒か焼酎かまでは決めてませんが(汗)。
 あと、セフィロスに浴衣(というか、着流し)を着せてみたかったという趣味丸出し話だったりします。……クラウドは似合わんだろうな(笑)。


 で、最初クラセフィな展開に持っていくかと見せ掛けてセフィクラで終わっちゃったというネタ、やってみたかったんです。
 クラウドに押し倒され攻められながら、実は逆転のチャンスを狙っていたセフィロスだったりします。
 ……違う話でも、かなりの確立でクラセフィ未遂→セフィクラ完遂ネタを書きそうです(;^_^A。


 紫 蘭
 

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